ニュース性の判断方法|広報担当者はどうやって「記事になる情報」を見つけるのか

「この取り組み、プレスリリースにできますか?」
広報をしていると、担当部署からこんな相談を受けることがあります。
新しい商品を発売する。
新しい制度を導入する。
新しい施設を開業する。
他社と新しい取り組みを始める。
担当部署からすれば、時間をかけて準備してきた大切な案件です。
だから、
「ぜひプレスリリースを出したい」
と思うのも当然だと思います。
でも、広報担当者として最初に考えるのは、
「リリースを書くかどうか」
ではありません。
まず考えるのは、
「これは、そもそもどういう取り組みなのか」
ということです。
ニュース性を判断するには、まず事実を知らなければいけません。
いきなり「ニュースになる・ならない」を判断しない
例えば、担当部署から、
「新しい制度を始めます」
と相談されたとします。
これだけでは、私はニュースになるかどうかを判断できません。
何をするのか。
いつ始めるのか。
誰が対象なのか。
どれくらいの規模なのか。
これまでと何が違うのか。
他社でもやっているのか。
どんな効果を期待しているのか。
まずは、こうした事実を確認します。
数字で表せるものがあれば、それも聞きます。
対象人数、投資額、拠点数、面積、導入件数など、案件によって見る数字は変わります。
そして、もう一つ大切なのが、
「なぜ、それをするのか」
です。
「なぜ?」を川上まで遡る
私は、プレスリリースを作るときに、できるだけ川上からロジックを確認するようにしています。
例えば、
「新しい人事制度を導入します」
という話があったとします。
なぜ導入するのか。
人材を確保するため。
では、なぜ人材確保が必要なのか。
業界全体で人手不足が進んでいる。
ここまで確認すると、
単なる、
「当社が新制度を導入しました」
という話ではなくなります。
「業界の人手不足という課題に対して、会社が新しい制度を導入する」
という見方ができるようになります。
もちろん、毎回ここまで一問一答で聞いているわけではありません。
経験を積めば、担当者の話や社会情勢から推察できることもあります。
それでも、表面的な事実だけを見てプレスリリースを作るのではなく、
「なぜ会社は今これをするのか」
まで考えることは大切だと思っています。
ここが分からなければ、ニュースのストーリーを作るのは難しいからです。
次に「ニュースになる要素」を探していく
事実関係がある程度分かってきたら、次にニュース性を考えます。
私は、一つの基準だけで判断しているわけではありません。
例えば、
「初」なのか。
「最大」なのか。
他社ではあまりやっていない珍しい取り組みなのか。
規模は大きいのか。
社会課題と関係しているのか。
世の中で注目されているテーマなのか。
多くの人に影響するのか。
地域にとって意味があるのか。
会社として大きな投資をしているのか。
経営方針と関係しているのか。
いろいろな角度から見ていきます。
特に、
「日本初」「業界初」「地域初」「日本最大」
といった要素は分かりやすい。
ニュース性を考えるうえで、かなり強い材料になります。
一方で、
「AIを使っています」
「環境に配慮しています」
「地域活性化につながります」
というだけで、ニュースになるわけではありません。
流行している言葉が入っているからといって、それだけで記者が記事にしてくれるわけではないからです。
大切なのは、
その案件の中に、どれだけニュースになる要素があるのか。
そして、それらを組み合わせたときに、どれくらいのニュースバリューになるのか。
私は最終的に、そこを総合評価しています。

※ここが画像②のベストポジションです。文章で判断軸を一通り説明した直後なので、読者が「つまり何を見るの?」を一覧で整理できます。
「珍しいと思います」は、そのまま信じない
担当部署から、
「これ、業界でも珍しいと思います」
と言われることもあります。
その場合、
「珍しいんですね。ではリリースにしましょう」
とはなりません。
まず、
「なぜ珍しいと思うのか」
を確認します。
何社くらい調べたのか。
どうやって調べたのか。
競合他社では本当にやっていないのか。
その根拠を確認します。
私自身でも、インターネットや過去の報道などを調べます。
担当部署が嘘をついているという話ではありません。
担当者にとっては珍しく見えても、業界全体を見ればすでに一般的になっていることもあるからです。
逆もあります。
担当者自身は、
「これくらい普通ですよ」
と思っていても、調べてみると他社ではほとんどやっていない。
そんなこともあります。
だからこそ、
担当部署の評価ではなく、事実を集めて広報として判断する。
ここにも広報担当者の専門性があると思っています。
ニュース性は「足し算」で強くなる
一つひとつでは、それほど強くない情報でも、複数の要素が重なるとニュース性が高くなることがあります。
例えば、
「新しい制度を導入する」
だけでは弱い。
でも、
新制度を導入する。
業界で人手不足が問題になっている。
他社ではまだ珍しい。
対象者が多い。
社会的にも注目されている。
こうした事実が重なると、見え方は変わってきます。
私はこれを、厳密な点数計算として考えているわけではありません。
「初だから20点」
「社会性があるから10点」
と足して、70点を超えたからリリース、というような判断ではない。
時代によっても、記者によっても、媒体によってもニュースの価値は変わります。
だから最後は、
複数の要素を見たうえでの総合判断
になります。
まずは「現状のままならどうか」を考える
ここまで情報を集めると、
ある程度、
「このままでニュースになるか」
が見えてきます。
現状のままで十分強い案件もあります。
少し情報を追加すればいけそうな案件もあります。
一方で、
「今のままでは、報道を狙うのは厳しいな」
と思う案件もあります。
若い頃の私は、ここで断ることがありました。
「ニュース性が弱いので、リリースは難しいと思います」
と。
その方が楽だからです。
でも、今は少し考え方が変わりました。
せっかく担当部署が広報に情報を持ってきてくれた。
そこで、
「ニュースになりません」
だけで終わらせるのは、もったいないと思っています。
だから今は、
「現状では弱い。では、どうすればニュースになるだろう」
と考えます。
今ある情報の中に、まだ見つけられていないニュース要素はないか。
さらに聞けば、もっと大きな話が出てこないか。
そして、情報発信まで時間があるのであれば、もう一歩踏み込みます。
今あるニュースを探すだけではなく、ニュースになる事実そのものを作れないか。
ここからが、広報担当者の腕の見せどころだと思っています。
ニュース性が弱ければ、「事実そのもの」を育てる
今ある情報を調べても、
「このままでは少し弱い」
ということはあります。
ただ、発表まで時間があるのであれば、そこで判断を終える必要はありません。
もう一段、上の階層まで考えてみます。
例えば、ある企業が、
「自社施設に新しい省エネ設備を導入する」
とします。
調べてみると、同じような設備を導入している会社はすでにたくさんある。
これだけでは、ニュースとしては弱いかもしれません。
では、
設備を導入すること以外に、何か新しい取り組みを加えられないか。
施設全体のエネルギー使用量を大きく削減する施策まで広げられないか。
それが難しいなら、一施設だけではなく、複数の拠点に展開できないか。
あるいは、設備や運用方法そのものに新規性を持たせられないか。
具体的な削減目標を設定できないか。
そうやって、
今ある事実を深掘りする
↓
周辺の取り組みまで広げる
↓
さらに上位の施策まで考える
↓
対象や規模を広げる
↓
取り組みそのものを変えられないか考える
と、少しずつ階層を上げていきます。

※③はここです。本文の矢印部分と図の内容がほぼ一致しているので、文章→図解の流れが自然です。
もちろん、広報担当者が勝手に事業や制度を変更するわけではありません。
担当部署に、
「こういうことまでできれば、社会的な意味も大きくなりますし、情報発信としても強くなります」
と提案する。
できるかどうかは、そこから担当部署と一緒に考えます。
私は、これも広報の仕事だと思っています。
広報は、完成したニュースを受け取って発信するだけの仕事ではありません。
ニュースを見つける。
情報を掘る。
そして場合によっては、ニュースになる事実そのものを育てる。
ここまでやって初めて、広報としての価値が出てくると思います。
「出せません」と言われても、そこで終わりではない
もう一つ、ニュース性とは別に考えなければならないことがあります。
その情報を、本当に会社として公表できるのか。
ニュース性が高くても、担当部署から、
「これは出したくない」
と言われることはあります。
競争上の問題がある。
将来の計画がまだ不透明。
他社に真似されたくない。
取引先との関係がある。
記者にまだ言えないことまで聞かれると困る。
理由はいろいろあります。
もちろん、担当部署にデメリットがあるのに、広報が無理やり出すわけではありません。
ただ、
「出せません」
と言われたら、私はまず、
「なぜ出せないのか」
を確認します。
理由が分かれば、広報側で解決できる場合があるからです。
例えば、
「将来の計画がまだ不透明だから出せない」
のであれば、
将来の話は出さずに、
現時点ですでに確定している事実までを公表することはできないか。
と考えます。
「記者から、まだ言えないことまで聞かれるのが嫌」
ということであれば、
大人数を集めた記者発表ではなく、特定の記者への個別説明にする方法もあります。
広報が窓口となって、情報の出し方をよりコントロールしながら進める。
「この数字は出せない」
のであれば、その数字を使わずにニュースのロジックを成立させられないか。
「他社に真似されたくない」
のであれば、競争力の源泉となる詳細には触れず、取り組みの目的や公表できる事実だけで発信できないか。
つまり、
「出せない」を、そのまま答えにしない。
何が出せないのか。
なぜ出せないのか。
どこまでなら出せるのか。
発信方法を変えれば対応できないのか。
そこまで確認します。

※④はこの位置が最適です。「出せない」をどう分解するかを一通り文章で理解してから、図で全体を整理できます。
それでも担当部署にとってデメリットが大きければ、発信しないという判断も当然あります。
大切なのは、
「出す・出さない」の二択から考え始めないこと。
どうすれば会社にとってメリットのある形で発信できるのかを考えたうえで、総合的に判断します。
ニュースになるときは、頭の中に「記事」が見えてくる
情報を聞いて、
「これはいけそうだ」
と思ったときには、私の頭の中にはある程度の記事が浮かんでいます。
例えば、
どんなタイトルになりそうか。
最初に何を書くのか。
その次に、どんな背景を説明するのか。
どの数字が使われそうか。
担当者のどんなコメントが必要か。
私は、その想定記事を頭の中に置きながら、さらに担当部署から情報を集めています。
ただ、若手社員の頃からこれができていたわけではありません。
経験を積む中で、
「記者なら、こういう記事を書くのではないか」
というイメージを持てるようになってきました。
そして重要な案件では、その頭の中にあるものを実際に想定記事として書きます。
想定記事を作る目的は、
「記事になるかどうかをテストする」
だけではありません。
実際に書いてみると、
「この数字が足りない」
「ここからここへの話がつながっていない」
「この部分は担当部署にもう一度聞いた方がいい」
といったことが見えてきます。
さらに、
「こういう記事を狙っています」
と担当部署に見せれば、広報と担当部署で発信のイメージを共有することもできます。
想定記事は、ニュースの完成形を関係者で共有するための資料でもあるのです。

※⑤はここです。この画像は想定記事についての説明をすべて読んだ後に置くことで、「なるほど、記事を書くこと自体が情報収集なんだ」と理解しやすくなります。
「ニュースになるか」の次は、「誰にとってニュースなのか」
ニュース性がある。
そこで判断は終わりません。
次に考えるのは、
「誰にとってニュースなのか」
です。
同じ情報でも、媒体によって興味を持つポイントは違います。
例えば地域初の取り組みであれば、地方紙が興味を持つかもしれません。
経営方針に関係する話であれば、経済紙との相性がいい。
専門性の高い技術や取り組みであれば、専門紙の方が深く取り上げてくれる可能性があります。
だから私は、
「ニュース性があります」
だけではなく、
「では、どの媒体を狙うのか」
まで考えます。
そして、ターゲットが変われば、ニュースのロジックも変わります。
経営を扱う媒体なら、市場環境と経営戦略との関係が重要になるかもしれない。
専門紙なら、技術的な新しさや業界課題との関係が重要になる。
地方紙なら、その地域にどんな影響があるのかが重要になる。
そこで、
「この媒体を狙うなら、この情報が足りない」
と気づくこともあります。
そうなれば、もう一度担当部署に聞きに行きます。
場合によっては、さらにニュースを育てる提案に戻ることもあります。
広報の仕事は、
STEP1から順番に進めて終わる単純な作業ではありません。
行ったり来たりしながら、情報の精度を上げていきます。
「リリースを出すか」ではなく、「どう伝えるのが一番いいか」
ここまで考えて、ようやく発信方法を決めます。
ここも新人広報には知っておいてほしいところです。
担当部署から、
「リリースできますか?」
と聞かれたからといって、
答えが、
「できます」
「できません」
の二つしかないわけではありません。
情報発信には、いろいろな方法があります。
報道を積極的に狙うなら、ニュースリリースを出して記者に伝える。
内容によっては、記者発表をする。
一斉に発信するより、特定の記者へ個別に説明した方がいいこともある。
報道数はそれほど期待できなくても、会社として記録に残す意味がある情報もあります。
受賞や認定などがその一例です。
消費者にリリースそのものを見てもらうことを目的にすることもあります。
ニュースレター、PR資料、ホームページのお知らせやトピックスという方法もあります。
つまり広報が考えるべきなのは、
「リリースできるか?」
ではなく、
「この情報を、誰に、どんなロジックで、どんな方法で伝えるのが一番効果的か?」
です。
その結論を担当部署と調整し、必要な社内承認を得て、会社として発信します。
ニュース性は、最後まで「総合評価」
ここまで書いてきましたが、
「ではニュース性を簡単に判定できるチェックリストはないのか」
と思う人もいるかもしれません。
もちろん、
初。
最大。
希少性。
規模。
社会課題。
時流。
地域性。
影響範囲。
といった確認項目はあります。
でも、
「初だからニュースになる」
とは限りません。
逆に、
初でも最大でもないのに、大きく報道される案件もあります。
媒体によっても違う。
時代によっても違う。
同じ「AI」というテーマでも、AIというだけで記事になりやすかった時期と、AIを使っているだけでは珍しくなくなる時期があります。
だから私は、
ニュース性で一番大切なのは「総合評価」だと思っています。
一つの項目だけを見るのではなく、
事実を集める。
背景を掘る。
他社と比較する。
社会を見る。
ニュース要素を探す。
弱ければ育てる。
出せなければ、出せる方法を考える。
誰に届けるかを考える。
その媒体なら、どんな記事になるのかを考える。
そして最後に、
「この情報を今、社会にどう伝えるのが最も効果的なのか」
を判断する。
これが、私がニュース性を考えるときに頭の中でやっていることです。

※⑥はここが一番いいです。冒頭に置くと情報量が多すぎます。ここまで本文を読んだ人なら、13STEPを見た瞬間に「今まで読んできた話は、こういう構造だったのか」と整理できます。
広報担当者の仕事は、ニュースを判定することではない
広報担当者というと、
出来上がった情報を受け取って、
プレスリリースを書いて、
マスコミに配信する仕事だと思われることがあります。
でも、実際はその前にたくさんの仕事があります。
ニュースを見つける。
そして、
ニュースを育てる。
場合によっては、
ニュースになる事実そのものをつくるための提案をする。
さらに、
そのニュースを最も届きやすい相手と方法で伝える。
ここまで考えて、ようやく情報発信になります。
だから、広報担当者に必要なのは、
「文章を書く能力」だけではありません。
むしろ、その文章を書く前に、
何をニュースとして切り取り、何を追加し、誰に、どう伝えるのかを考える力。
そこに、広報という仕事の専門性があると思っています。
新人の頃から、すべてを完璧に判断できる必要はありません。
私自身も、若い頃はニュース性が弱ければ断っていましたし、今のように情報を聞きながら想定記事まで思い浮かべられていたわけではありません。
でも、
「これはニュースになる」
「これはニュースにならない」
だけで終わらず、
「なぜそう思うのか」
そして、
「どうすれば、もっとニュースになるのか」
まで考える。
この繰り返しが、広報担当者としてのニュースを見る力を鍛えていくのだと思います。

