半年会社を離れて分かった。会社は普通に回る。
育休を取る前、「会社を半年も休んで大丈夫なの?」と聞かれることが何度かあった。
評価は下がらないか。
キャリアに影響はないか。
周りに迷惑をかけないか。
もちろん、全く気にならなかったわけではない。
でも、できない理由を探せば、いくらでも見つかる。
だから私は、あまり考えすぎないようにした。
周りに迷惑をかけることについても、それは上司や会社が組織として考えることだと割り切っていた。
もし私が管理職だったら、また違う判断をしたかもしれない。
自分の代わりを任せられる人を育て、配置した上で休むことを考えたと思う。
ただ、それは実際にその立場になってみないと分からない。
少なくとも当時の私は、「半年育休を取る」という決断をした。
⸻

⸻
そして、半年間会社を離れて分かったことがある。
会社は普通に回る。
正直、驚きはなかった。
もともと、そうなると思っていたからだ。
私がいなければ、その分成果や精度は多少落ちるかもしれない。
でも、それだけのことだ。
必要なら他の人が担当し、組織として仕事を進めていく。
大企業とは、そういうものだと思う。
だからといって、自分に価値がないという話ではない。
育休中、記者の方から「あなたがいなくて困りました」と声をかけてもらえたことがあった。
その言葉は素直に嬉しかった。
積み重ねてきた信頼や関係性は、確かにあったのだと思う。
それでも会社は止まらない。
組織とは、一人が抜けても回るようにできている。

一方で、育休中に改めて気づいたことがある。
父親には、代わりがいない。
ある日、私が娘に、
「会社に行くより、ずっと一緒にいたいな。」
そんな話をしたことがあった。
すると娘は、小さな声でこう言ってくれた。
「ばんがれ、ばんがれ、とーと。」
まだ「がんばれ」と上手に言えない娘が、一生懸命応援してくれた。
私は、その言葉を一生忘れないと思う。
育休を取っていなければ、この言葉を聞けたかどうかは分からない。
子どもは、甘えたい時に甘え、怒りたい時には怒る。
癇癪を起こして泣き叫ぶこともある。
でも、それは父親だから見せてくれる姿なのだと思う。
信頼しているから、安心して感情をぶつけられる。
会社では、多少精度が落ちても私の代わりをしてくれる人はいる。
でも、私の子どもにとって、父親の代わりはいない。
⸻

⸻
半年間、子どもたちと過ごして思ったことがある。
人生観が大きく変わったわけではない。
でも、自分がこれまで大切にしてきた価値観が整理され、「やっぱりこれでいいんだ」と確信を持てるようになった。
その一方で、会社を離れてみると、自分はまだまだ無力だとも感じた。
会社という看板や仲間がいるからこそ発揮できていた力も、たくさんある。
だからこそ、復帰後はもう一度仕事に向き合い、自分自身の力も磨いていきたいと思っている。
⸻

⸻
もし半年前の自分に一言だけ伝えられるなら、こう言う。
「最高に幸福な半年になるぞ。」
子育ても、家事も、決して楽ではない。
それでも、子どもと過ごす時間は何にも代えられない。
育休を取るか。
どれくらい取るか。
その答えは、人それぞれだと思う。
会社の状況も違えば、家庭の事情も違う。
だから、誰かの正解をそのまま真似する必要はない。
自分の価値観に照らし合わせて、決めればいい。
私にとって、半年という選択は正解だった。
会社は普通に回る。
それは、自分に価値がないという意味ではない。
会社は組織だから、一人が抜けても回るようにできている。
だからこそ、本当に自分しかできないことに時間を使うという選択肢もある。
私にとって、それは子どもが小さいこの時期に、父親としてそばにいることだった。
だから私は、この半年を選んで本当に良かった。

