仕事ができなかった私が、14年間かけて見つけた「自分にできること」

学生時代、私はいつか父の会社に入るのかもしれないと思っていた。
父はリフォーム会社を経営していた。
小さい頃からその姿を見ていたので、将来的に父の会社で働く可能性もあるのかなと、ぼんやり考えていた。
ただ、大学を卒業してすぐに入るつもりはなかった。
新卒で入れば、当然教育にも時間や費用がかかる。
それなら一度外の世界を見る。
大きな会社で働き、仕事の進め方や組織について学ぶ。
一人の社会人として成長した上で、将来的に戻る選択肢もある。
そんなふうに考えていた。
父の会社に戻るためにも、外で学びたかった

大学では建築を学んでいた。
父の会社も住宅に関わる仕事だったので、同じ業界で経験を積むことは意味があると思った。
特に住宅会社は、リフォームよりも上流の仕事。
そこで学んだ経験は、もし将来父の会社に戻るとしても活かせると思った。
また、大企業がどう動いているのかにも興味があった。
大きな組織では、どんな仕組みで仕事が進むのか。
どんな考え方で判断されるのか。
それを学びたいと思った。
建築学科から、まさかの広報へ

入社当時の私は、今思えば怖いもの知らずだった。
「一番厳しい部署で成長したいです。」
そんなことを話していた。
だから正直、営業に配属されるのかなと思っていた。
建築学科出身だったこともあり、建築に直接関わる仕事を想像していた。
でも実際の配属は広報だった。
最初は想像していなかった。
広報がどんな仕事なのかも、十分理解できていなかったと思う。
ただ、今振り返ると広報で本当に良かった。
広報は会社全体を見る仕事だった。
住宅だけではない。
経営。
新商品。
社会課題。
危機対応。
会社のあらゆる情報に関わる。
もし将来、経営側の視点を持つなら、会社全体を見る経験ができたことは大きかったと思う。
最初から仕事ができたわけではない

正直に言うと、若手時代の私は仕事ができなかった。今もできると自分では言いにくい部分だが、若手の頃は
資料作成は遅い。
精度も低い。
ミスもする。
何より、言われた仕事の目的を理解できていなかった。
「なぜこれをするのか」
「何を解決するためなのか」
そこまで考えられていなかった。
とりあえず目の前の作業を進める。
そんな状態だった。
記者から、
「何を言っているのか分からない」
と言われたこともある。
上司にも毎日のように怒られた。
長い時間、立ったまま指導を受けることも日常茶飯事だった。
当時は本当に苦しかった。
それでも、できるようになりたかった

仕事ができなかった。
だからこそ、できるようになりたかった。
仕事終わりや土日も、自分なりに勉強した。
文章の書き方の本を読んだ。
広報に関する書籍も読んだ。
他社の展示場にも一人で行った。
ホームページを読んだ。
住宅や建築についても勉強した。
少しでも足りない部分を埋めたかった。
分からないことがあれば、社内の詳しい人に聞きに行った。
時には社外の人にも話を聞いた。
自分だけで考えて分からないことは、詳しい人から学ぼうと思った。
そして広報として必要な社会の流れを知るために、毎日新聞も読んだ。
最初からできたわけではない。
少しずつ積み重ねていった。
広報14年で学んだこと

広報の仕事を続ける中で、一番感じたことがある。
仕事は結局、人との信頼関係だということ。
広報は会社と社会をつなぐ仕事。
どれだけ正しい情報を持っていても、信頼されていなければ伝わらない。
記者との関係。
社内との関係。
人と人とのつながりが大切だった。
特にリスク対応では、それを強く感じた。
発表前は連日夜中まで働くこともあった。
日を跨ぐこともあった。
情報が整理されている状態で始まるわけではない。
社内から情報を集める。
事実を確認する。
それを分かりやすい形に整理する。
社内で調整する。
簡単ではなかった。
実際の発表は当日で終わる。
でも、本当に大変なのはそこに至るまでの準備だった。
父の会社ではなく、自分自身で何ができるか
もともとは、いつか父の会社に戻る可能性も考えていた。
でも結果的に、父の会社は売却することになった。
戻る場所がなくなったというより、自分自身のこれからを考えるきっかけになった。
父の会社に戻るのではなく、自分自身には何ができるのか。
そう考えるようになった。
会社の看板だけではなく、自分の価値を作りたい
若い頃は、成長したい、評価されたいという気持ちが強かった。
もちろん今も成長したい。
会社の中で頑張ることも大切だと思っている。
一方で、経験を重ねる中で感じることもあった。
組織で働いている以上、時には上司の考えと自分の考えが違うこともある。
その時に、自分の思いをすべて押し殺して合わせ続けるだけでいいのか。
そう考えることもあった。
会社員として学んだことには感謝している。
でも、会社の看板だけではなく、自分自身でも価値を届けられる人になりたい。
広報の経験を活かして、誰かの役に立てる状態を作りたい。
入社1年目の自分へ
もし、入社1年目の自分に声をかけるなら。
こう伝えたい。
今は出口の見えない迷路にいるように感じるかもしれない。
永遠に自分は仕事ができないんじゃないか。
そう思う日もあると思う。
でも、目の前のことから逃げずに努力を続ければ、少しずつできることは増えていく。
最初から仕事ができたわけではない。
できない自分を認めて、学び続けただけ。
その積み重ねで、社会人として歩いていけるようになる。
14年間の会社員生活は、それを教えてくれた。

