人生で一番喜んでもらえたプレゼントは、自分で書いた一冊の本でした

「何を贈れば、一番喜んでもらえるだろう。」
父と母が今年、金婚式を迎える。
50年という節目だからこそ、心から喜んでもらえるものを贈りたいと思った。
旅行、食事、花、時計。
いろいろ考えた。
どれも素敵なプレゼントだと思う。
でも、どれも決め手に欠けた。
私が伝えたかったのは、「ありがとう」という気持ちだったからだ。
そんなことを考えていたある日、ふと思った。
「本を書こう。」
頭に浮かんだのは三つの想いだった。
- 感謝を伝えたい
- 喜んでくれたら嬉しい
- 少しは成長した姿を見せたい
これが、私が本を書くことを決めた理由だった。
目次
手紙ではなく、本を書こうと思った理由
感謝を伝えるだけなら、手紙でも十分だったと思う。
それでも私が本を選んだのは、一生残るものを贈りたかったからだ。
本なら、本棚に残る。
何年後かに読み返してもらえるかもしれない。
その時だけで終わるプレゼントではなく、時間が経っても残るものを贈りたかった。
書き始めてから、もう一つの理由にも気づいた。
私は兄と姉がいる。
二人は父や母と一緒に仕事をした経験がある。
一方で私は、大学卒業後に就職して家を出た。
社会人になってから何を考え、何に悩み、どんな価値観を持ちながら生きてきたのか。
そういう話を改めてする機会は、ほとんどなかった。
振り返ると、私はどこかで両親にもっと自分のことを知ってほしかったのかもしれない。
父からは昔から「坊ちゃんだな」と言われてきた。
もちろん、それは愛情を込めた言葉だと分かっている。
でも私は、両親が思っている以上に、自分なりに悩み、自分なりに努力してきた。
そのことを知ってほしかった。
だから、この本は感謝を伝えるだけではない。
「あなたたちに育ててもらった私は、こんな人生を歩んできました。」
そんな人生の報告書でもあった。
本を書き始めると、人生を振り返る時間になった

パソコンを開き、新しいWordファイルを作る。
タイトルを書き、カーソルだけが静かに点滅している。
「何から書こう。」
最初の一文を書いた瞬間、不思議なくらい昔の記憶がよみがえってきた。
私は両親への本を書いているつもりだった。
でも実際には、自分の人生をもう一度歩き直していた。
最初に思い出したのは、家族旅行だった

年末になると、家族旅行へ行くのが我が家の恒例だった。
小さい頃は父の実家がある田舎へ帰省し、お年玉をもらうことが毎年の楽しみだった。
大人になると兄弟それぞれ予定が合わなくなった。
それでも年末だけは家族全員で旅行へ出かけた。
マカオでは父と一緒にカジノへ行った。
ルーレットで私は負け、父は勝った。
今では笑い話だ。
旅行を書いていて気づいた。
私が一番覚えていたのは、観光地ではなかった。
家族みんなで笑っていた時間だった。
育休中に改めて感じた「家族が幸せそうにしていることが、自分の幸せ」という価値観は、この頃からずっと変わっていなかったのだと思う。
次に思い出したのは、父の背中だった

父が会社を立ち上げた頃、事務所は家の一室だった。
そこは、もともと私の部屋だった。
荷物も残っていたので自然とその部屋へ行くことが多く、事務所が移ってからも時々見に行っていた。
当時は、父が何をしているのかよく分からなかった。
「営業が上手な人なんだろうな。」
それくらいにしか思っていなかった。
でも今なら分かる。
家の一室から会社を立ち上げ、それを大きくしていくことがどれほど大変だったのか。
子どもの頃には見えていなかった父の努力を、社会人になった今だからこそ少し理解できるようになった。
そして、留学のことを思い出した

大学時代、私はアメリカへ10か月留学した。
決して安い費用ではなかったと思う。
それでも、留学したいと伝えた時、両親は反対しなかった。
「いってらっしゃい。」
その一言だけだった。
当時もありがたいと思っていた。
でも、自分が親になった今、その一言の重みを以前より深く感じる。
私にも二人の子どもがいる。
もし将来、「海外へ行きたい」と言われたら、笑顔で送り出せるだろうか。
きっと簡単ではない。
だからこそ、あの一言には信頼や覚悟が込められていたのだと思う。
最後に思い出したのは、支えられてきた人生だった
社会人になって間もない頃、自分の能力の低さに悩み、仕事が本当に苦しかった時期があった。
思い切って実家へ電話をすると、両親と姉が大阪まで来てくれた。
何か特別なアドバイスをもらった記憶はない。
それでも十分だった。
「一人じゃない。」
そう思えたからだ。
本を書いていなければ、この出来事もここまで深く思い返すことはなかったと思う。
私はずっと、家族に支えられて生きてきた。
そのことを改めて実感した。
本を書いて分かったこと
ページを重ねるたびに、思い出が一つずつ増えていった。
- 嬉しかったこと
- 苦しかったこと
- 挑戦したこと
- 支えられたこと
書き終えた時、最初に思った。
「時間はかかったけど、作り切った。」
大きな達成感があった。
もちろん、喜んでもらえたら嬉しい。
でも、たとえ期待した反応じゃなかったとしても、一冊の本を書き上げたことは、自分にとって大きな自信になると思えた。
本を渡した日

完成した本は製本し、袋に入れ、白い少しキラキラした紐で結んだ。
育休中だからこそ実現できた家族旅行。
私から両親を誘い、徳島のエクシブへ出かけた。
宿泊した部屋で旅行が始まり、父と母は娘と息子を代わる代わる抱っこしていた。
その時、母が孫たちへ洋服をプレゼントしてくれた。
「今度は私から。」
そう言って、本を手渡した。
その場では読まなかった。
旅行を楽しんでほしかったからだ。
後日、本を読んだ両親から連絡があった。
「改めて、素直な子だったんだなと思い出した。本当に嬉しかった。」
その言葉を聞いた時、真っ先に思った。
「頑張って作ってよかった。」
高価なプレゼントを渡した時とは少し違う充実感があった。
相手のことを考えながら時間をかけて作る。
その時間も含めて、プレゼントなんだと思った。
あなたにとって、一番大切な人は誰ですか
この記事を読んで、「本を書いてみよう」と思ってもらえたら嬉しい。
でも、本当に伝えたいのはそこではない。
手紙でもいい。
アルバムでもいい。
動画でもいい。
大切なのは、相手のことを想って時間を使うことだ。
私は今回、その方法として本を書くことを選んだ。
もし、あなたにも心から喜んでもらいたい人がいるなら、一度だけ考えてみてほしい。
その人にとって、一番嬉しいプレゼントは何だろう。
値段ではなく、想いと時間を形にした贈り物が、人生で一番心に残るプレゼントになることもある。
私は、この本を書いてそう感じた。

